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超高速の不揮発性キャッシュを実現する次世代MRAM技術(Impress Watch)

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超高速の不揮発性キャッシュを実現する次世代MRAM技術
[元記事]
 半導体メモリ技術の研究開発に関する国際学会「国際メモリワークショップ(2019 IEEE 11th International Memory Workshop(IMW 2019))」が、米国カリフォルニア州モントレーで2019年5月12日~15日(現地時間)の日程で開催された。最終日の15日の午後3時過ぎには、すべての発表講演が無事に完了した。その直後から、総合議長による恒例の閉会挨拶(クロージング・リマーク)がはじまった。【この記事に関する別の画像を見る】 クロージング・リマークでははじめに、ワークショップ(13日~15日の技術講演会)とショートコース(12日の技術講座、別料金)の参加登録者数が公表された。ワークショップの参加登録者数は238名、ショートコースの参加登録者名は131名である。ショートコースの参加者はすべてワークショップにも参加したと考えられるので、ワークショップ参加者の55%がショートコースにも参加したことになる。
 ワークショップ参加登録者の地域別内訳は、米国がもっとも多く117名で49%を占める。ついでアジアが多く90名で38%、それから欧州が31名で13%である。
 開催地が米国西海岸であることを考慮すると、アジアから太平洋をわたって参加した人数が4割近くというのは、かなり多く感じる。ちなみに前回のモントレー開催である2017年のIMW(IMW 2017)では、米国の比率が60%、アジアの比率が28%だった。アジア比率が10ポイントほど増えていることがわかる。
 クロージング・リマークでは、過去6年間の参加登録者数の推移も示した。過去最高の参加者を集めたのは、前回(2018年)の京都開催である。345名に達した。今回は当然ながら、京都開催にはおよばなかった。前回のモントレー開催における参加者数243名、前々回(2015年)のモントレー開催における参加者数241名と、ほぼ同じ水準である。
■次回の国際メモリワークショップはドイツのドレスデンで開催
 クロージング・リマークでは、次回の開催場所と日程が公表されることが恒例となっている。過去、国際メモリワークショップ(IMW)の開催場所は初回(2009年)の米国開催(カリフォルニア州モントレー)から、アジア、米国、欧州、米国、アジア、米国といった順序で変化してきた。隔年で米国開催、隔年でアジアまたは欧州で開催、という順序である。
 この慣例にしたがうと、次回の開催場所は欧州となる。そして慣例どおり、欧州のドイツ、ドレスデン(Dresden)で次回のIMWを開催することがクロージング・リマークで発表された。日程は2020年の5月17日~20日である。
 ドレスデンはドイツの東端に位置する古都で、東端の州であるザクセン州の州都でもある。近年はドレスデン周辺は「シリコン・サクソニー(Silicon Saxony)」と呼ばれており、半導体メーカーや半導体製造装置・材料メーカー、半導体研究機関などが集中する地域となっている。
■次世代MRAM技術でサブナノ秒のスイッチングを達成
 ここからは、技術講演会のハイライトをご紹介しよう。研究開発機関のimecが、次世代MRAM技術「スピン軌道トルクMRAM(SOT-MRAM)」の記憶素子を試作し、現行世代のMRAM技術「スピントルク注入MRAM(STT-MRAM)」のおよそ10倍の高速スイッチング(データ書き換え)を達成した研究成果である(論文番号4-3)。
 製品化されている現行世代のMRAM技術「STT(Spin-Transfer-Torque)-MRAM」は一時期、マイクロプロセッサやSoC(System on a Chip)などのキャッシュに応用することが期待されていた(プロセッサのキャッシュにMRAMを使う参照)。キャッシュに使われているSRAM技術に比べ、待機時の消費電力が低いというのがそのおもな理由である。
 しかしSTT-MRAM技術は動作時の消費電力が高い、書き込み(磁化反転)に要する時間がかなり長い、書き換え回数に制限がある、といった問題点があり、現状にいたるも解決策が見出されていない(高速/長寿命でオンチップSRAMキャッシュの置き換えを目指す第4世代MRAM技術参照)。
 そこで代替案として考えられているのが、次世代MRAM技術である。その代表的なメモリ技術が「スピン軌道トルクMRAM(SOT-MRAM)」だ。
 STT-MRAMとSOT-MRAMの記憶素子構造はかなり近い。いずれも、磁気トンネル接合(MTJ)を記憶素子とする。MTJは固定層(RL)と自由層(FL)があり、その中間に極薄のトンネル絶縁膜層があるという、3層構造が基本である。自由層(FL)の磁化の方向を変えることで、記憶するデータ(電気抵抗値)を書き換える。
 STT-MRAM(現行技術)では、自由層(FL)の磁化の方向を変えるときに、スピンの向きのそろった電子をMTJに大量に注入する。注入電子のスピンは自由層の電子スピンと反対向きなので、注入電子のスピンによるトルクが自由層の電子スピンを動かすトルクとなり、最終的には自由層のスピンの向きを反転させる(磁化反転)。
 ここで問題となるのが、データの書き換えを繰り返すと注入電子によってトンネル絶縁層が少しずつ劣化することだ。この劣化により、データの書き換え回数が制限される。書き換え寿命を延ばすには、注入電子の量、すなわち書き換え電流を低くしたい。しかし書き換え電流を低くするとスピンの磁化反転(スイッチング)に要する時間が長くなり、高速メモリであるキャッシュ用途には使えなくなる。
■トンネル絶縁層に電流を注入せずに磁化反転を起こす
 そこで磁気トンネル接合に電流(電子)を注入せずに、自由層(FL)の磁化を反転させる構造がいくつか考案されている。その1つが前述のスピン軌道トルクMRAM(SOT-MRAM)である。SOT(Spin Orbit Torque)-MRAMの記憶素子は、磁気トンネル接合(MTJ)の自由層(FL)に接するように、重金属の薄膜を貼り付けた構造をしている。重金属薄膜の材料には、「スピンホール効果(SHE : Spin Hall Effect)」と呼ぶ物理現象を起こせるものが選ばれる。具体的には、タングステン(W)、白金(Pt)、タンタル(Ta)などである。
 スピンホール効果とは、電流を流すと電子スピンの状態によって反対向きの力が電子に働き、アップスピンの電子(スピンが上向きの電子)とダウンスピンの電子(スピンが下向きの電子)が電流に直交しかつ反対の方向に移動する現象のことである。電流を流すと、電子スピンの偏り、すなわち磁気モーメントが生じる。この効果を利用して、データを書き換える。
 まず、重金属層に電流を流してスピンホール効果を発生させる。すると重金属層の表面(MTJの自由層と接する側)と裏面にスピンの異なる電子が集まる。このとき重金属層の表面に集まったスピンの向きが自由層のスピンの向きと反対であれば、相互作用によって自由層のスピンの向きが反転する。すなわち磁化反転が起こる。
 なお重金属層に電流を流すため、SOT-MRAMの記憶素子は重金属層の2つのボトム電極(BE)を備えた3端子素子となる。またスイッチングを高速化するため、弱い外部磁界(静磁界)を必要とする。
■STT-MRAMとSOT-MRAMの性能を同じ記憶素子で比較
 imecは、磁気トンネル接合(MTJ)と重金属層を備えた記憶素子を試作した。この記憶素子はSTT-MRAMとSOT-MRAMのどちらの原理でも動作する。そこで、同じ記憶素子で両者の性能を比較してみせた。
 試作した記憶素子は、STT-MRAMモードのスイッチングとSOT-MRAMモードのスイッチングの両方で動作した。STT-MRAMモードのスイッチングに必要な電圧は約0.5V~1.0Vで、スイッチング(平行状態から反平行状態への遷移)に必要な電圧パルスの時間は5ns~20nsだった。なお、外部磁界は印加していない。
 SOT-MRAMモードのスイッチングに必要な電圧は約0.3V~1.0Vで、スイッチングに必要なパルスの時間は0.28ns(280ps)~5nsだった。外部磁界の大きさは24mTである。同じスイッチング電圧で比較すると、STTモードで5nsのときに、SOTモードでは280psとスイッチング時間が10分の1以下に短くなっていた。
 そしてスイッチングに必要なエネルギーは、STTモードが5nsのスイッチングで約470fJであるのに対し、SOTモードが280psのスイッチングで約350fJで済んだ。高速かつ低消費エネルギーになっている。
 スピン軌道トルクMRAM(SOT-MRAM)の記憶素子が高速かつ低消費であることは実証された。書き換えサイクル寿命やデータ保持特性などの長期信頼性の確認は、まだこれからだ。
 別の課題もある。1つは、3端子素子であるため、メモリセルのレイアウトをどうするのかが不透明なことだ。もう1つは、外部磁界を必要とすることである。とはいうものの、開発はまだ、基礎研究段階にある。今後の研究開発の進展を期待したい。

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