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「AI+人間」で手塚治虫の新作漫画を生み出す「TEZUKA2020」。漫画『ぱいどん』がお披露目(Impress Watch)

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「AI+人間」で手塚治虫の新作漫画を生み出す「TEZUKA2020」。漫画『ぱいどん』がお披露目
[元記事]
Copyright(c) Tezuka Production, 「TEZUKA2020」プロジェクト, 2020 NVIDIA corporation【この記事に関する別の画像を見る】 「TEZUKA2020」とは、AI技術と人間のコラボレーションで手塚治虫の「新作」漫画の制作に挑むプロジェクトだ。2019年10月に東芝メモリ株式会社から社名変更したキオクシア株式会社のブランドキャンペーン「#世界新記憶」第1弾として企画された。
 手塚治虫の漫画を元データとして、プロット(漫画の基本的な構成要素)とキャラクター原案をAIが自動生成し、その言わば「漫画のタネ」をインスピレーションのソースとして人間がストーリーを練り、ネームを作って漫画を描いた。一部の下絵作成はロボットアームで行なっている。
 AIと人間のコラボで制作された漫画のタイトルは『ぱいどん』。「2030年の東京で、進んだ管理社会に背を向ける男ぱいどん。記憶をなくしたホームレスだが、小鳥ロボットのアポロとともに事件に解決すべく立ち向かう」というストーリーの漫画で、講談社・週刊「モーニング」13号(2月27日発売号)に前編が掲載される。
 発売日の前日である2月26日には講談社でお披露目とプロジェクト内容が紹介された。なお後編は現在製作中で、掲載場所は3月19日に告知予定。
 「TEZUKA2020」プロジェクトのおもなメンバーは、キオクシア株式会社「TEZUKA2020」プロジェクトチームのほか、手塚プロダクション取締役 手塚眞氏、公立はこだて未来大学副理事長 松原仁氏、公立はこだて未来大学システム情報科学部教授 迎山和司氏、慶應義塾大学理工学部教授/電気通信大学人工知能先端研究センター特任教授 栗原聡氏。
 具体的には手塚治虫漫画の主要長編65作品を29項目で人手でデータ化して、世界観と背景分析を行なった。また短編131話を13フェイズのシナリオ構造テンプレートに落とし込んでデータ化した。
 そして栗原研究室の学生が開発していたプロット生成技術「ASBS(Automatic Scenario Building Sysytem)」で約130本のプロットを作った。それを元に手塚眞氏が発想を膨らませてシナリオ化していった。シナリオライターはあべ美佳氏。
 キャラクター画については生成モデルの一種「StyleGAN」を使った。NVIDIAによる実写顔学習済みモデルをベースに、手塚治虫のさまざまなキャラクター画像数千枚を切り出して転移学習させて生成させた。それを人手でブラッシュアップした。
 最終的なキャラクターデザインは手塚プロダクションの瀬谷新二氏、漫画家の池原しげと氏、つのがい氏の3人が手がけた。ネーム作成は漫画家の桐木憲一氏が行ない、キャラ作画はつのがい氏、背景は池原しげと氏が担当した。
■AIが人をサポートする一例としての漫画作成プロジェクト
 今回のプロジェクトをプロデュースし、計算資源を提供したキオクシア株式会社 執行役員技術統括責任者 百冨正樹氏は「半導体メモリを手がけるキオクシアは『記憶で世界をおもしろくする』がミッション。第1弾としてこのプロジェクトを行なうことにした。今回実際に漫画になり、雑誌で発表されることに非常に興奮している」と最初に挨拶した。
 AI技術部分をおもに担当した慶應義塾大学理工学部教授 栗原聡氏は「今回の挑戦は人工知能がどのように人のクリエイティブと連結するのか、どのようにAIが人をサポートできるのかということをわかりやすく示せるものとして実施した」と語った。
 手塚プロダクション取締役 手塚眞氏は、AIが漫画を描くという話が来たときに「意味のある研究だが、10年以上かかるのではないかと考えた」と述べた。今回の漫画完成については「まさに手塚治虫先生の漫画の世界のよう。そのこと自体の意義を強く感じている」と述べた。
 このあと、プロジェクトに実際に関わったキオクシア株式会社SSD事業部 cSSD技術部 参事の国松淳氏のほか、ゲストとして漫画家で公益社団法人 日本漫画家協会会長のちばてつやさん、手塚治虫文化賞短編賞を受賞しているカラテカ矢部太郎さんも加わって、トークのかたちでプロジェクト概要が紹介された。
 キオクシアの国松淳氏はプロジェクトの発端について「多くの人にわくわくしてもらいたいと考えた。いま、手塚治虫さんが存命だったらどんな漫画を描くだろうかと考えて手塚プロダクションと栗原先生たちに話をもちかけた」ときっかけを紹介した。
■プロットのキーワード生成
 慶應義塾大学の栗原教授はプロット生成手法について、「物語は基本的に13個に分かれている」という仮説に着目して、主要長編65作品、短編131話の漫画をデータ化したと紹介した。
 具体的にはキャラクターの属性、ストーリー展開などを人間が手で文字にして切り出していった。なおこれは完全に人力だったので、たいへんな作業だったそうだ。人手の作業によるデータ化によって、作品ごとのパターン、パーツが蓄積される。それを組み合わせて新しいプロット130個を生成したというのが基本的な手順だ。
 プロット生成のときには手塚作品らしさを表すパラメータを組み込むことで、手塚作品風のプロットを生成できるようにした。そのシナリオのタネを元に手塚眞氏が想像力を働かせてシナリオ化していったという段取りだ。栗原氏は「人が想像力を働かせるために貢献できたのではないか」と語った。
 学習データ用の漫画の選択は、手塚氏眞氏が行なった。手塚作品は年代や想定読者によってさまざまなタイプがある。そこでとくに手塚治虫がもっとも連載を抱えていた70年代の作品群に絞り込んでデータ化を行なったという。
 また主人公名(ぱいどん)については、AIが生成した主人公の設定が「日比谷にいて哲学者で役者でギリシャ」といったものだったことと、手塚治虫自身が落語の三題噺のように物語を作っていたことから、ギリシャに関連するソクラテスにちなんで「ぱいどん」という名前にしたと語った。
 ゲストの矢部太郎さんは「たいへん勉強になる。だけど手塚先生のエッセンスが現れているように思う」と述べた。またこのほかに、AIが生成したプロットのなかに「主人公が鳥」というものがあったことから、これも手塚作品ぽいと考えて、その設定を「ぱいどん」に取り込んだという。
■キャラクターデザイン原案の生成
 キャラクターについては、手塚漫画のデータだけではAI学習には不足していた。正面を描いた顔があまりないからだ。そこでキオクシアシステム技術研究開発センターと協力して「StyleGAN」を使うことにし、手塚漫画以外から「顔」というものをまず学習させて、それをベースに手塚漫画のような顔を作ったと紹介された。
 具体的には、NVIDIAによる実写顔学習済みモデルを元にして、「転移学習」させることで、キャラクター原案とする絵を作ったという。なお学習データ用の漫画からの顔画像切り出しは人手のほか、公立はこだて未来大学システム情報学部 情報アーキテクチャ学科 教授の迎山和司氏らの開発した技術が使われた。
 手塚眞氏はAIが生成した多数の画像から「ぱいどん」の顔を選んだ理由について、「片目が見えず、どこか秘密がありそうな顔」に魅力を感じたと述べた。「手塚治虫的な雰囲気も出ているし、だが、手塚治虫の漫画にはない顔」ということで、最終的に絞り込んだという。
 ぱいどんの顔についてコメントを求められたゲストのちばてつやさんは「なんとも懐かしい感じがした。『どろろ』や『ブラックジャック』、手塚治虫さんの血が入っているキャラクターだったので懐かしかった」とコメントした。
 なお、サブキャラクターやモブシーンに登場するキャラもAIが生成した画像を使ったとのこと。衣装などは人が描いたものだ。栗原教授らは本来はそこも自動生成させたかったという。
 そしてシナリオとキャラクター原案からネームを作り、漫画を製作した。漫画を読んだ感想を聞かれた矢部太郎さんも「リスペクトを込めて作られていることがわかった。その世界に自分がいて体験できている読書体験だった」と評価した。
■人がよりクリエイティブを発揮するためのAI技術
 今回のプロジェクトを受けて今後の漫画作りについて質問された、ちばてつやさんは「若い漫画家は何を描いていいのか、わからないことがある。そういうときにコンピュータに自分の好みを入力していろいろなデータが出てくれば、若い漫画家が出発するきっかけになるだろう。新しい漫画の世界がはじまるようで楽しみだ」と答えた。
 そして「『ぱいどん』はおもしろかった。5年かかるような企画を半年で作ってしまった」と高く評価した。なお矢部太郎さんから、「ちば2020」の可能性については?と聞かれたちば氏は、「こわい(笑)」とコメントした。
 キオクシアの国松氏は「人間とAIが協力して漫画を作るという1つのかたちをはじめて作ることができた。数年後にはもっと洗練されるだろう。半導体製造などでも、AIと人間のコラボを進めていきたい」と語った。なおキオクシアでは半導体の設計や品質の向上にGANを用いている。
 栗原氏は「AIについて懸念する声も大きい。だがわれわれが考えるAIは技術。技術は人が楽をするためのもの。人本来の発想を技術がサポートすることで、よりクリエイティブを発揮できるようになる。こうした力を使うことで、自分だけが楽しむための自分だけのための漫画も作れる。AI技術について前向きに考えて『こういうかたちで人と技術の共生が進んでいくのだ』と感じてもらいたい」と語った。
 手塚氏は「今回は手塚漫画を蘇らせることをテーマとして行なったが、これは教育や養成にも使える。未来に漫画文化を残していくためにも役に立つ技術だ。10年経ったら当たり前の技術になっているかもしれない。スマートフォンのなかで簡単に漫画が自動生成されて友達に送れるような時代もすぐに来るだろう。そういうかたちで漫画が世界に広がる。そのなかに手塚治虫のニュアンスが含まれていることが重要なこと。大きな意義として発表ができたのではないか」と語った。
 なお未完成の後編については、「AIが考えたストーリーに含みがあった。1回にはまとまらない」と考えて2回に分けたとのこと。「人気が出れば連載を目指したいが、まずは後編を完結させたい」と語った。
■世界トップだからこそ挑戦し進化しなければならない
 最後に講談社「モーニング」編集長の三浦敏宏氏は、今回の企画掲載について「最初はお断りした。まだ『AIが描いたと呼べるレベルではない』からだ」と述べた。
 だが栗原教授による「このプロジェクトを進めていると『人間はすごい』と思うことばかりなんですよ」という言葉を聞いて、鉄腕アトムを創ったときの天馬博士の苦悩と似ているなと思ったという。
 アトムは事故死した天馬博士の息子の似姿として作られたが、ロボットなので成長しない。人間ではないという壁にぶつかってしまう。その苦悩に大元が似ているなと思い、「これは手塚先生が生きていらっしゃったらおもしろがったのではないか」と感じたと述べた。
 そして「日本の漫画文化は数少ない世界一のものだと言える。世界でトップだからこそ、日本の漫画文化は挑戦しなければならない。日本の漫画文化を大きくしてくれた先生たちから次に伝えて継承していかないといけないし、進化もしないといけない

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